服が急に似合わなくなった。
そんな経験誰もがあるだろう。
私が似合わなくなったのは、BABY, THE STARS SHINE BRIGHTのロリィタ服だった。
去年のクリスマスのディナーコンサート。お気に入りのいちごとチョコレートの、ピンク色のジャンパースカートを着てクリスマスっぽくしたつもり。でも黒のブラウスで少し大人に、私っぽく。
でも私は、もともと私をいじめていた女の子からの目線に違和感を感じた。彼女も気まずいみたいで話しかけてこない。でももしかして、私の格好を見て話しかけてこないのかな。珍しくそう思った。だって彼女は、すごく大人っぽいファッションだったから。
決定打は大晦日。家族同然の妹分がお泊まりに来た。前から着てみたいと言っていたのを、満を持してロリィタ体験。ロリィタを着た彼女はとても可愛く、一緒に初めてのメイクをする彼女にたち会えるのが嬉しくて、ついニヤニヤしてしまう。
でも彼女はすごく似合って、可愛かった。
体型もあるだろう。ギュウギュウに詰め込んでなんとか着る私と違い、彼女はブカブカなくらいだった。細くてその少女っぽさが、ロリィタによく似合う。
でも彼女の可愛さは、間違いなく若さがもたらす美しさだった。
私にロリィタが似合わないわけじゃないと思う。言ってしまえば、ロリィタは下手に細すぎる身体より、太めの方が迫力が負けずに似合うくらいだ。それにある意味、迫力で着こなすものなので、着続けているプライドが必要なものだと感じる。
でも彼女はすごく可愛かった。
それと同時に、自分にBABYがもう甘すぎる、という現実を認めざるを得なくなった。
なんとなく、前ほど本気で周りから「可愛い」と言われるより、呆れた「可愛い」を聞くことが多くなった気がしていた。これは住む土地が変わったからもあるかもしれないが。
前なら自分にぴったり、と思っていたミルクティー色のくまの耳がついたケープコートが甘すぎるように感じ、キュートな柄がたくさん入ったジャンパースカートが自分から浮いているように違和感を覚え始めた。おでこ靴が子供っぽくて、これも違和感。
BABYが、私に似合ってない。あの寄り添うような、守られているような感覚が、もうない。
結論。私にBABYはもう似合わない。
年齢的なことが1番問題なのかもしれない。私がBABYを着れなくなる日が来るなんて。
でもどうだろう。BABYで見かけた、45歳は過ぎていそうな女性。金髪のウィッグを被って甘いBABYを全身に身につける姿は、私のなりたいものではなかった。
私の人生のステージが変わり、BABYが似合わなくなったのだ。
服が似合わなくなるときは大抵そうだ。年齢を感じさせるというより、自分の中の生き方が、生き様が、スピリットが変わったとき。そんなときに服に違和感を感じるようになる。
これは変えどき。そう思った私は、個人ブランドや作家もののロリィタファッションが揃う、セレクトショップを覗きに行った。
ネットでは完売の商品や、今や店頭販売されていないブランドまであってびっくりした。名古屋でしか扱っていないそうで、小さなお店でも名古屋のロリィタファッション文化を担っているのだと嬉しくなる。
店員さんに「BABYが似合わなくなって・・・こういうブランドに変えどきかなと思って・・・・」と言うと、「そういう時期、ありますね」と言いながら、店内をじっくり見る私に、「これ、あのなくなったブランドのデザイナーさんが新たに作ったブランドのお洋服ですよ」とか、ゆっくり付き合ってくれた。
個人ブランドのほとんどが、デザイナー本人が着たいと思った服、という条件をまず満たしている。個人ブランドを作るくらいだから35歳を過ぎているのが当たり前で、体型的にもキュッと締まったロリィタ服が着れなくなるデザイナーさんが多く、まず体型にわりと配慮されて、着ていて疲れないものが多い。
ロリィタは疲れようとも精神で着るもの、という考えも多いが、実際問題、歳がいくとロリィタ服と生活を両立させて着れるものをデザイナーさんご本人も思うのだろう。フィジカルドロップのデザイナーさんなんて、「ライブで立ったままヘドバンできなきゃ意味ない」とそれ前提で作ってるとか、聞いたことあるし・・・
かつて流行ったまんが、Real Clothsでもあった。年齢的に既成服が着づらくなってきたら、デザイナーものを着るべきだと。デザイナーのスピリットそのものが、服と自分のスピリットを結びつけるからと。
BABYが着れなくなったのは、悲しい。私の最愛のブランドだったから。
でも新しいロリィタの世界がある。ロリィタは甘いだけじゃない。スピリットを着るのだから。
もしかしたら、今まで「ちょいダサくない?」と敬遠してたメタモルフォーゼのロリィタ服が、逆に今そのダサさがピッタリかも、と思ったりもするし、個人ブランドを着こなすのも楽しみだ。もしかしたら、今まで似合わないと嘆いていたBABYのお姉さんブランドであるアリパイが着こなせるかもしれない。少なくとも、ものによってはBABYの髪飾りはいまだに似合うし、BABYと完全に切れてしまうわけではないし。
しかも、金欠なので残り少ないBABYのものを売ったりしているのだが、くまくみゃちゃんのぬいぐるみが悲しそうな顔をしているので、なんか売れなくて元の位置に戻したら嬉しそうな顔をしておる。きみ、うちのぬいぐるみに親友でもできたんか?
服が似合わなくなる。当然だ。7年前の私とは違うのだから。
でも、新しいロリィタ服を身につけることはできる。今の私にぴったり合うスピリットを持つ、ロリィタ服を!
世界の終わりじゃないし、私はここでロリィタ服を諦めない。
ばかみたいだけど、私の運命のお洋服で、闘いで、矜持だから。
いつまでパニエ膨らませて歩けるかわかんないけど、やる気があるかぎりは、パニエ膨らませるよ!